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イベント

2025年06月11日

TUFS Cinema アラブ映画特集『土地と海』

開催日

2025年07月19日 (土) ~ 2025年07月19日 (土)

東京外国語大学TUFS Cinemaは、映画を通じ、世界の諸地域における社会・歴史・文化の理解を深めることを目的として行っています。

今回上映するドキュメンタリー映画『土地と海』は、20世紀後半に発生したレバノン内戦を扱っています。内戦の勃発から50年という節目にあたる本年、この映画を通じて、中東地域における紛争、記憶の継承や喪失について、改めて考える機会となるでしょう。

日時2025年7月19日(土)14:00-16:45 14:00開映(13:40開場、16:45終了予定)
会場東京外国語大学 アゴラ・グローバル プロメテウス・ホール
その他入場無料、事前登録制、一般公開
事前登録制での開催となります。登録はこちらから。

※ フォーム登録後に登録メールアドレスに受付完了メールが届きます。当日、入口にて受付完了メールをご提示いただきますので、ご準備くださいますようお願い申し上げます(スマホ画面で問題ありません)。
※ 事前登録がなくてもご来場いただくことは可能ですが、会場入口で参加登録をしていただきますので、事前にご登録いただくとスムーズにご入場いただけます。定員を超える場合は、事前登録を済ませた方を優先させていただきます。

*保育所の案内、会場の案内、問い合わせ先などの詳細については、こちらのページの下段をご覧ください。
共催東京外国語大学 TUFS Cinema、AA研基幹研究「「記憶」のフィールド・アーカイビング:イスラームがつなぐ共生社会の動態の解明」
協力東京外国語大学多言語多文化共生センター

プログラム

14:00-14:10監督からのメッセージ(動画上映)
Daniele Rugo(映画監督)、Carmen Abou Jaoudé(共同製作者)
14:10-15:25映画『土地と海』本編上映(73分)
15:25-15:35休憩
15:35-16:15上映後解説/トーク
岡部 友樹(神戸大学)、児玉 恵美(日本学術振興会PD・専修大学)
司会:黒木 英充(AA研)
16:15-16:45Q&A

作品紹介

『土地と海』

監督:ダニエル・ルーゴ
共同製作者:カルメン・アブー・ジャウデ、ダニエル・ルーゴ
原作テキスト・ナレーション:イリヤース・フーリー
2023年/レバノン・イギリス/73分/アラビア語/日本語字幕/原題 The Soil and The Sea (アラビア語 Bahr wa Turab

あらすじ

レバノンでは、内戦(1975–90)の勃発から50年の節目を迎える今もなお、庭園や学校、海の底など、市民生活の場や町の風景のあちこちに多くの遺体が埋もれており、家族らは愛する人の遺骨の帰還を待ち続けています。本作は、地中に隠されたレバノンの歴史と、いまだ癒えない人々の悲しみに光をあて、内戦の記憶と向き合うことの重要性を問いかけます。監督のダニエル・ルーゴ氏は、証言者の顔をあえて映さず、その声を紛争中の映像や現在の風景と重ねることで、内戦の暴力とその残された影響を静かに、しかし力強く描いていきます。

本作について

本作『土地と海』は、レバノン内戦によって行方不明となった人々と、その家族が抱える沈黙と苦悩に迫るドキュメンタリーです。ナレーションを務める作家の故イリヤース・フーリー氏(1948–2024)は、レバノンの海を、遺体が沈む無数の集団墓地として語ります。その風景に重ねられる家族の「声」は、平凡に見える場所に眠る暴力と死の記憶を呼び覚まします。顔を映さず、声と風景だけで構成される映像は、拉致・強制失踪という「見えない暴力」の本質と、それに抗う記憶の回復、そして対話の重要性を静かに訴えかけます。残された家族が求めるのは「真実」と「遺骨」、すなわち故人を尊厳をもって迎え入れることです。集団墓地の保存や証言の記録は、忘却に抗う手段であり、移行期正義への第一歩でもあります。こうした問題は、レバノンに限らず、ボスニア、イラク、コロンビアなどの内戦後の社会にも共通するものであり、世界各地で起こる紛争の記憶と正義をめぐる課題と深く響き合っています。

解説者

■監督からのメッセージ

Daniele Rugo ダニエル・ルーゴ
映画監督、共同製作者
ロンドン・ブルネル大学教授。ドキュメンタリーと紛争、世界の映画、映画の哲学、風景と環境映画などを専門とする。これまでの監督作品に『戦争について(About a War)』『ロンドン・オリンピックのそばで(The Olympic Side of London)』などがある。

Carmen Abou Jaoudé カルメン・アブー・ジャウデ
共同製作者
政治学者。モンペリエ大学にて政治学の博士号を取得。サン・ジョセフ大学客員研究員を務め、ベイルート・アメリカン大学、カスリーク聖霊大学などで教鞭を執る。専門は、レバノンにおける紛争後の記憶、強制失踪、移行期正義。かつて国際移行期正義センターの所長を務め、レバノンにおける暴力とその遺産に関する多数のレポートを執筆している。

■解説

岡部 友樹 OKABE Yuki (神戸大学)
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科、研究指導認定退学。現代中東政治とくに、レバノンの政治・紛争が専門。

児玉 恵美 KODAMA Emi (日本学術振興会PD・専修大学)
東京外国語大学総合国際学研究科博士後期課程修了。専門は中東地域研究(レバノン)、難民研究。

(司会・企画)
黒木 英充 KUROKI Hidemitsu (AA研)
東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了。専門は中東地域研究(シリア・レバノン近現代史)。1989年よりアジア・アフリカ言語文化研究所在職。